物語がつまった宝箱
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2016年3月で、3歳になった娘・ふきとのくらしのあれこれをつづっていきます。

  • 最終回 母と娘 2016年6月1日更新
 1年4ヶ月続いた連載も、今回でいったんおしまい。最後に「母と娘」いうお題を自分で決めたものの、書き出したら反省で埋まってしまいそうです。これまで落ち込むことや母親としての不甲斐なさをたくさん感じてきたけれど、3歳を過ぎていよいよ、子育ての「壁」のようなものに直面するようになってきました。  普段はニコニコ穏やかで、よく笑い、よく踊り、ご陽気このうえない娘・ふき。集中力があるのでひとりで遊べる時間が長く、育てやすい子なのだと思う。けれど思い通りにいかないと癇癪(かんしゃく)を起こすことがあって、最近その部分が強くなってきたよう。だいたいゴネる内容は決まってて、「好きなもの(ピンク、スカート)を身に付けたい」か「自分でやりたかった!」のどちらか。子どもはみんなそんなものかもしれないけれど、”こだわり”は特に強いほう。
 今年度から新しい保育園に移り、絶賛やさぐれ中のふき。新しい園になかなか慣れることができず、家で癇癪をおこしやすくなっているのも、仕方のないこと。昨年度、初めて保育室に通い始めたときも荒れたけど、まだ言葉を話せなかったから、ただ泣くばかりの娘を強引に先生に引き渡すしかなかった。ひと月ほどで落ち着いて楽しく通えるようになったので、春の憂鬱(ゆううつ)を忘れてた。  4月当初の私は、自分の仕事も詰まっていてひどく余裕がなく、包みこむどころか同調してイライラしてしまっていました。ふきは朝が一番ひどく、まず着るものにあれもこれもヤダ! と泣き、なにかにつけて「ふきちゃんがやりたかった~!」と癇癪をおこす。就寝時のオムツをはずした時、テープを止める。洗濯機のボタンを押す。ゴミ出し。ジャムをパンにぬる。いろいろやらせなくてはいけないことがあるのだけど、忙しさのあまりぱぱっとやっちゃうと、地団駄踏んで怒り出す。着替えも「やって~」という日もあれば、着せようとすると「やりたいの!」と怒る日もあり。毎朝ぐずぐずその調子で、ふきと私の大声が響きわたる日々が続いていました。そして送り出したあと、自己嫌悪に陥るコース。  そんな4月のある日、なかよしのJくん&Hちゃん兄妹と遊んでいた時のこと。Jくんに虫かごの中を見せてもらっているとき、妹のHちゃんが覗き込んできて、視界の邪魔になった途端――「やめて!」とものすごくキツイ言い方で叫んだふき。「……私の真似をしている‼︎」 その日の夜中、ワッと飛び起きて眠れなくなるほど、ショックだった。それまでも、ふきの癇癪は短気な自分の影響じゃないか、と気に病むことはあったけど、これはもう、決定的だったから。一番身近な親の言動を真似するのは、当然のこと。「もう二度と怒鳴らない」と一大決心をしました。
 それからひと月ほどたった今。一度も私は怒鳴ってない? ――かなりマシになったとはいえ、声を荒げていないかというとそんなことは全然ありません。あまりにキーキー言われると、人間だもの、こっちもムカムカしてしまう。癇癪の向こうにある甘えたい気持ちをくみ取る努力をしながら、親も一歩ずつ成長している感じです。ガーッと怒るとふきは萎縮はせず、同じようにガーッと向かってくるタイプ。それでは私の悪い部分をそのままコピーさせてしまうだけ。優しい人になってほしいなら、私がふきに優しく接するしかないのよね……。  もちろん持って生まれた性質があるから、全部親(自分)のせいにしてたら、子育てなんて苦しくてやってられません。よく夫に「一つだけの答えを求めないほうがいい」と言われるのですが、どの子も全部、対処法はちがうんだもんね。「これはまずい」と思ったら、ひとつずつ軌道修正していくしかないのかも。
 私の子育て目標は、ふきが赤ん坊の頃から変わらず「3人きょうだいの末っ子くらいの気持ちで育てる」。自分がまさにそうで、姉や兄と違って放っておかれたのが楽だったので、子どもに一生懸命になりすぎないように。でも愛情は伝えて、放置しないように。  これから娘はどんどん知恵をつけて人間らしくなり、私も「あの頃はこんなことで悩んでいたのか」と懐かしくなるほど、もっともっと大きな壁にぶつかっていくはず。未熟なりに、「真剣に向き合ったぞ」とあとから思えるように、接していきたいな。

この連載は加筆のうえ、2017年に祥伝社から出版の予定です

著者プロフィール

  • 杉浦さやか

    日本大学芸術学部在学中に、イラストレーターの仕事を始める。独特のタッチと視点のイラスト&エッセイが、読者の熱い支持を集めている。イラストのかわいらしさはもちろん、文章のうまさにも定評がある。著書に『ベトナムで見つけた』『東京ホリデイ』など、多数。