物語がつまった宝箱
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 東京の花や緑のスポットと、その周辺の街をめぐるお散歩レポート。花を追いかけての連載なので、どうしても掲載の時期と花の見頃がずれてしまうのですが……街自体も魅力的な場所を歩くので、ぜひお楽しみください!
 第1回は梅見。今回訪れたのはーー

  • vol.1 梅の咲く丘へ 2024年4月1日更新
 小田急線・梅ヶ丘駅前に広がる小高い丘、羽根木公園。もとは笹が生い茂る丘だったのが、昭和40年代から梅の植樹が行われ、今や紅白合わせて60品種以上・650本もの梅が咲き乱れる、都内屈指の梅の名所になっています。まさに駅名通り、見事な梅の丘。  毎年2月初旬から3月はじめまで「せたがや梅まつり」が開かれ、週末はさまざまなイベントや出店で賑わいます。訪れたのは2月下旬、前日の雨で花が落ちてしまった木もあったけど、甘い香りが園内に満ちていました。冬晴れの空に深紅や薄紅のかわいい花がよく映えます。  梅ヶ丘駅にはあまりなじみがなかったけれど、2つ先の経堂駅は活気のある商店街が続き、雑貨屋さんやカフェが点在していて、時おり訪れていました。その間にある豪徳寺駅は二両編成の世田谷線が走り、招き猫で有名な「豪徳寺」のある街。 最近かわいいお店があちこちにできて、そぞろ歩きも楽しい。梅の丘を起点に3つの街へと、早春散歩にくり出しました。
・羽根木公園&梅まつり https://setagaya-umematsuri.com
・梅丘 寿司の美登利 総本店 https://www.sushinomidori.co.jp ・ホットケーキパーラー Fru-Full 梅ヶ丘店 https://www.frufull.jp/umegaoka ・duft https://duft.jp/ ・SiKiTO EDA STAND https://sikito.com/pages/edastand
 小さな商店街に個性的な個人商店が並び、活気がありつつものんびりとした雰囲気の豪徳寺駅周辺。開発の進んだ経堂と、静かな梅ヶ丘のちょうど中間で、なんとも居心地がいい。  そんな豪徳寺にオープンした新スポットが、2020年に取り壊される予定だった洋館、旧尾崎邸。1888年に建てられた木造建築で、高級官僚だった尾崎三良男爵が、娘・テオドラ英子のために、六本木に建てたとされる家。1933年豪徳寺に移築されました。  漫画家の山下和美先生ほか有志の方々が私財を投げ打って買い取られ(詳細は山下和美著『世田谷イチ古い洋館の家主になる』)、2024年春に喫茶室、ギャラリー、ショップを有するスペースとして蘇りました。  空色の壁の愛らしい家は、築135年を超える建物とは思えないほどしっかりしたつくり。館に合わせて配されたアンティーク家具や照明が、当時の姿を彷彿とさせてくれる。こんな素敵な建物が、消えないで残ってくれた奇跡に、思いを馳せるのでした。
・旧尾崎テオドラ邸 https://ozakitheodora.com/

(つづく) 次回は2024年5月1日更新予定です。

著者プロフィール

  • 杉浦さやか

    日本大学芸術学部在学中に、イラストレーターの仕事を始める。独特のタッチと視点のイラスト&エッセイが、読者の熱い支持を集めている。イラストのかわいらしさはもちろん、文章のうまさにも定評がある。著書に『ひっこしました』『ニュー東京ホリデイ』『世界をたべよう!旅ごはん』『たのしみノートのつくりかた』など、多数。