物語がつまった宝箱
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私は1971年9月生まれです。
8歳から18歳の多感な時期を過ごしたのは、1980年代。
来年でちょうど仕事を始めて30年の節目を迎えるにあたり、この連載で今の自分を作ってくれた大好きなもの、ことを、超個人的な思い出とともにふりかえっていきたいと思っています。
懐かしんでもらったり、ぜんぜん知らなかったり、50歳のイラストレーターのつぶやきにおつきあいいただけたらさいわいです。

  • ILLUSTRATOR 憧れのイラストレーター 2022年8月1日更新
1980年代の2大ティーン・ファッション誌といえば、『Olive』と『mc Sister』。 私が今、イラストレーターとして活動しているのは、この2冊の雑誌があったからこそ。 今をときめく女性イラストレーターがたくさん描いていて、 高校生の時に「イラストレーターになろう!」と決めたのはその華やかな活躍を見ていたから。 私の時代の『Olive』の代名詞ともいえる、仲世朝子さん。 両誌で描いていていたのが上田三根子さん、森本美由紀さん。 私が仕事でマーカーを使っているのは、この3人が当時使っていたから。 特に森本美由紀さんが大好きで、専用の切り抜きファイルは今も取ってあります。 50~60年代風のレトロなタッチがそれはおしゃれで、憧れました。 森本さんは『Olive』ではスタイリッシュなカットを描いていたけど、『シスター』には仲良しの編集さんがいたのか、いろんなおもしろい試みをされていました。 森本さんがアートディレクションをした写真+イラストのオードリー・ヘップバーン特集、「タマちゃん」というシュールな漫画の連載、 漫画『エースをねらえ!』や『伊賀野カバ丸』をパロったマナー講座コミック。 大人たちが本気で楽しんで作ったであろう記事は、ティーンの私に深く響いたもの。
*DO! BOOK 雑誌『mc Sister』の別冊ムック。サマードレスや手編み小物など、手作りテーマが多かった。私が大よろこびで買ったのは『きりぬきカード・ブック』(Part2もあり)と『カセット・レーベルブック』。森本美由紀さん以外にも、前回の「ドゥファミリィ」のイラストを手掛けていた真鍋立彦さん、内藤(現・ひびの)こづえさん、上田三根子さんなど豪華執筆陣。
『mc Sister』は映画や音楽のカルチャーページにも力を入れていて、 手もとにある86年の号のイラストはスージー甘金さん、87年は森本美由紀さん。 その後ろのお便りページの担当が、私が最も影響を受けたMONさん。 カルチャー要素たっぷりのイラストエッセイを得意とするMONさんを『シスター』で知り、 大学生になってからは著書を買い集め、ずっと追いかけてきました。 当時イラスト+文のスタイルは盛んで、お便りコーナーもイラストエッセイ風のものが多かった。 『Olive』は職業案内の特集を定期的にやっていて、 上田三根子さんのアトリエ訪問、というレポートもあったっけ。 そして1986年、中学3年生の時にはじまった仲世朝子さんの連載「のんちゃんジャーナル」。毎号買っていたのは『シスター』の方だったので、 熱心に読んだのは高校2年生の時に出た、連載をまとめた単行本。 絵本のような作りで、この本で得た知識はいっぱい。 ハリウッドの衣装デザイナー、イーディス・ヘッド。 昔の映画のかわいいタイトルロールの話。 神田「エリカ」などの古い喫茶店。長谷川町子美術館のこと。 今の自分が大好きなものを、たくさん教えてもらいました。 ずっと美術の評価は3だった平凡な学生に、将来の夢を抱かせてくれた諸先輩方。 今もその背中を追いかけ続ける日々です。
仲世朝子 イラストレーター。1954年生まれ。 多摩美術大学卒業後、デザイナーを経てイラストレーターに。デザイナー時代はOSAMU GOODSのデザインを手掛けていた。ペンネームの名付け親は、原田治さんと安西水丸さん。84年ごろは『シスター』にも仲世さんのイラストが。著書の『のんちゃんジャーナル』(マガジンハウス)は2巻もあります。

『オリーブの罠』(酒井順子著、講談社現代新書)の帯画

上田三根子 イラストレーター。1949年生まれ。 セツ・モードセミナー卒業。LION「キレイキレイ」のイラストといえば、幼な子からお年寄りまでわかるはず。何度かお目にかかっていますが、大御所なのに気さくで自然体、チャーミングな女性です。

『オートキャンプ場ガイド2022』(実業之日本社)のカバー画

森本美由紀 イラストレーター。1959~2013年。 セツモードセミナー卒業。在学中にデビュー以来、フリーのイラストレーター。著書に『ファッションイラストレーションの描き方ー線画をスタイリッシュに描くために』(誠文堂新光社)など。90年代以降は墨を用いたスタイリッシュなスタイル画を極めた。

『森本美由紀: 女の子の憧れを描いたファッションイラストレーター』(内田静枝編、河出書房新社)

MON(もん) イラストレーター。1962年生まれ。 セツ・モードセミナー卒業。著書の『ザ カリフラワーズトーク1~3』(講談社)、『MONのシネマパラダイス』(評伝社)など、今も私のバイブルです。成安造形大学教授。MONさんの授業に講師として招いていただいたことがあり、今も変わらず、おしゃれでかっこいい! 現在自身のレーベル「MONMON BOOKS&GOODS」で冊子や雑貨も販売。

MON著『女のコだもん!! からだと心のハッピー・ノート』(集英社みらい文庫)

(森本美由紀さんに関する内容はすべて 「森本美由紀 作品保存会」の承諾を得ています)

(つづく) 次回は2022年9月1日更新予定です。

著者プロフィール

  • 杉浦さやか

    日本大学芸術学部在学中に、イラストレーターの仕事を始める。独特のタッチと視点のイラスト&エッセイが、読者の熱い支持を集めている。イラストのかわいらしさはもちろん、文章のうまさにも定評がある。著書に『ひっこしました』『ニュー東京ホリデイ』『世界をたべよう!旅ごはん』『たのしみノートのつくりかた』など、多数。