物語がつまった宝箱
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 東京の花や緑のスポットと、その周辺の街をめぐるお散歩レポート。花を追いかけての連載なので、どうしても掲載の時期と花の見頃がずれてしまうのですが……街自体も魅力的な場所を歩くので、ぜひお楽しみください!  さて、第12回は、大温室での熱帯植物と水仙畑。訪れたのはーー

  • vol.12   夢の島・夢の温室 2025年3月1日更新
 植物館に行く前に、まず〝夢の島〟ってなに? 「ゴミの処分場」というイメージだけで、よく知らない場所でした。JR「新木場」駅周辺の人工島の、湾岸道路の南は新木場、北部分がほぼ公園で占められた夢の島地区。  もとは戦時中に、飛行場を造る目的で埋め立てられた島。目的は果たされず、戦後「夢の島海水浴場」として賑わったものの、財政難などで閉鎖。1957年からは、ゴミの埋め立て処分地となりました。当時はゴミを焼却していなかったので、虫やネズミの被害に近隣住人は苦しんだそう。最後には島ごと燃やす作戦が敢行されたのだとか。  徐々に各地に清掃工場が建設され、夢の島は東京都が公園として整備。ゴミの層に土を載せて緑化、1978年に「夢の島公園」としてオープンしました。そんな歴史が信じられないほど、現在の夢の島は緑いっぱいのクリーンな場所。  その公園内の「夢の島熱帯植物館」は、1988年に開館。清掃工場の余熱を利用した巨大な温室内に熱帯・亜熱帯の植物が植えられました。この温室が、予想以上に楽しい! ジャングルが再現されたドーム内は色とりどりの花があふれ、外は真冬の風が吹き荒んでいますが、中は百花繚乱の南国。かなりの非日常感が味わえます。
 
都立夢の島公園・東京都夢の島熱帯植物館 http://www.yumenoshima.jp/
MARINA & GRILL ​夢の島 https://www.marinaandgrill.com/
   新木場は、江戸時代から深川の木場に集まっていた材木関係の企業が、昭和30~50年代ごろに移転してつくられた街。駅の壁にもふんだんに木材が使われ、工業の街然として大きな倉庫や会社が並んでいます。  そんな木の街に、2017年に突如現れた「CASICA」。木材倉庫をリノベーションした建物の中は、 インテリアショップ、カフェ、ギャラリー、スタジオ、オフィスなどを兼ね備えた複合施設。外観も内装も倉庫のつくりを生かし、明るく開放感に満ちています。ユーズドの木の家具が並び、圧巻はカフェの壁一面に積まれた日本の古い棚。木の街ならではのコンセプトだったんだなぁ。  ゆっくりお茶してショップやギャラリーを見て、気づけばずいぶん長い滞在に。お店は少ない地区だけど、夢の島とここだけで旅気分大満喫。

(つづく) 次回は2025年4月1日更新予定です。

著者プロフィール

  • 杉浦さやか

    日本大学芸術学部在学中に、イラストレーターの仕事を始める。独特のタッチと視点のイラスト&エッセイが、読者の熱い支持を集めている。イラストのかわいらしさはもちろん、文章のうまさにも定評がある。著書に『ひっこしました』『ニュー東京ホリデイ』『世界をたべよう!旅ごはん』『たのしみノートのつくりかた』など、多数。