物語がつまった宝箱
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 東京の花や緑のスポットと、その周辺の街をめぐるお散歩レポート。花を追いかけての連載なので、どうしても掲載の時期と花の見頃がずれてしまうのですが……街自体も魅力的な場所を歩くので、ぜひお楽しみください!  さて、第4回はバラ。今回訪れたのはーー

  • vol.4 はとバス・バラと洋館ツアー 2024年7月1日更新
 友達だった夫との初デートは、はとバス夜景ツアー。オープンバスに乗り、東京タワーを眺め、レインボーブリッジを渡り、今はなきパレットタウンの大観覧車へ。私はこのときが初はとバスで、楽しいドライブに「こんな案を出してくれるなんて、センスいい!」と夫の株が爆あがりしたもの。  佐賀からやってきた義父と参加した、東京タワー+東京湾のクルーズ船ディナーのツアーもすごくよかった。去年は初夏に家族で下町グルメツアーに参加して、浅草や柴又で食べまくりました。   さて、今回はわが母と”薔薇の洋館めぐりと迎賓館赤坂離宮本館内部見学”という麗しいツアーに参加することに。私に花の名前をたくさん教えてくれた母、80歳を過ぎても趣味に旅行にと飛びまわっているけど、さすがに膝の痛みなどが出るようになってきました。座っているだけであちこち連れて行ってくれるはとバスは、効率よく回れるうえになにより楽ちん。  母はだいぶ前に、新宿にニューハーフショーを見に行くツアーに友人たちと参加して以来、2度目のはとバス(今回との振り幅……)。ホテルのランチも付いた豪華ツアー、旅行気分で、いざ!
・はとバス https://www.hatobus.co.jp/ ・はとマルシェ 東京都千代田区丸の内1-10-15 東京駅南口 はとバス 東京営業所内 営業時間:平日 9:00~17:00      土・日・祝:9:00~18:00      ※昼時間帯(12:00~13:00)前後は一時閉店の場合あり
 満員の参加者を乗せたバスは10時に出発。一路、北区西ヶ原にある旧古河庭園へ。春と秋の2回、約100種200株ものバラが次々に咲き乱れ、東京のバラの名所として名高い場所。  古河財閥の古河虎之助男爵の邸宅として、大正時代に現在の形に整えられました。高台に洋館、斜面にバラ園、低地に日本庭園という、変化に富むつくり。1917年に完成した洋館の特徴的な深いブラウンの石煉瓦は、神奈川の真鶴産の新小松石。  最盛期の日曜日とあって、園内は大混雑。時間の関係もあり、邸宅は外から見るだけだったけど、バラが見事に咲き誇っておりました。行程の各所それぞれ平均1時間弱の見学時間があり、それなりにのんびりできる。人の多さには驚いたけど、バラに合わせたおしゃれをしている人がたくさんいて、それも楽しかった。
 今回のツアーで楽しみにしてたのが、初訪問の鳩山会館。文京区の音羽、小高い丘に建つ館が竣工したのは、関東大震災の翌年、1924年。総理大臣を務めた鳩山一郎が建てた、政治家一族の邸宅ーー威風堂々としたつくりを想像していたら、意外なほどにかわいらしい内装。明るいサンルームに面した応接室には花々のステンドグラス、館内のあちこちに、苗字にちなんだ鳩のモチーフがちりばめられています。  意外な穴場なのか混雑もなく、のんびりたっぷり洋館やバラの庭を散策できたのが、なによりうれしかった。大小のバラのアーチや、花と美しい屋敷のコントラストにうっとり。  見学のあと、少し遅めの昼食。ここまでみんな集合時間を守り、定刻前に出発したおかげで、ホテルビュッフェもたっぷり満喫できました。
 最後は、元赤坂にある迎賓館赤坂離宮。一般公開していなかった昭和のころ、付近を散歩して門から眺めたねぇ、と母とともに懐かしみました。  大正天皇が皇太子だった明治32年から、東宮御所として10年がかりで建設された宮殿。総床面積約1万5000㎡の広大で入り組んだ館内を、順路通りにぐるぐると辿っていきます。現役で国賓を迎えている宮殿で国宝とあって、警備員さんの数がすごい。警備は厳重だけど、見どころをさりげなく教えてくれたりと、皆さん親切。  各部屋の豪華さには言葉を失います。晩餐会などに使われる「花鳥の間」は、壁中に絢爛たる七宝焼の花鳥画が配され、天井にも鳥が舞う。白地に金のレリーフがゴージャスな「彩鸞の間」は兜や日本刀の装飾、野戦テントの天井をモチーフにしていたりと猛々しい。見終わるころにはぐったりするほど、建物のパワーに圧倒されました。  バスは定刻の17時半より早く帰路につき、ガイドさんの「東京のバスガール」の歌声と、和やかな拍手でツアー終了。ゆっくり母と会話して、よくばりに花と素敵な建築物を味わえて、大満足。
・迎賓館赤坂離宮 https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/

(つづく) 次回は2024年8月1日更新予定です。

著者プロフィール

  • 杉浦さやか

    日本大学芸術学部在学中に、イラストレーターの仕事を始める。独特のタッチと視点のイラスト&エッセイが、読者の熱い支持を集めている。イラストのかわいらしさはもちろん、文章のうまさにも定評がある。著書に『ひっこしました』『ニュー東京ホリデイ』『世界をたべよう!旅ごはん』『たのしみノートのつくりかた』など、多数。